今でこそ埼玉県はディスられるのがお家芸となりましたが、なにも埼玉県が誕生したと同時にディスられてきたわけではありません。

きっかけは1980年代初頭にタモリさんが発言された「ダサイタマ」という言葉から始まっています。

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タモリさんが言わずともダサイタマは生まれてた

この言葉が広まったことで、埼玉=ダサいという印象が拡散していくことになりましたが、この言葉が広まった理由を、タモリさんが大手メディアから発信したからだと考えている人がいます。

もちろん、発信する媒体としては広まるのに申し分ない影響力を持っていましたが、この言葉がまるでお門違いの言葉だったら、40年近く経つ今日まで伝わっていません。

「ダサイタマ」という言葉は時代の空気のようなもので、当時誰もが潜在的に感じていたことだったわけです。だから、共感を得て話題になった。

つまり、ダサイタマという言葉が先行して埼玉=ダサいと印象付けられたわけではなく、埼玉=ダサいという空気が漂っていたからこそ、この言葉が誕生し、共感され、浸透したわけです。

タモリさんが喧伝せずとも、遅かれ早かれ誰かが「埼玉=ダサい」ということは言語化していたことでしょう。

埼玉県のダサさの真実

では、なぜ「埼玉=ダサい」という印象が共感されたのか。

カッコいい・ダサいの天秤は、容姿、つまりファッションがその割合を多く占めるものですが、東京の隣に位置し、当時から多くの埼玉県民が都内で過ごしていた状況を考えると、埼玉県民のファッション感度が際立って鈍かったということは、少々考えにくい話。

ネットショッピングもないあの時代、ファッション感度が低い県なんて、他にいくらでもあったはずで。

ファッションセンスがダサくなかったとすると、なにがダサかったのか。

それは、自分の身の回りにある「ダサい」を考えてみれば簡単にわかることです。

ダサいってこういうこと

例えば、修学旅行で地方から竹下通りに来ている学生は、当然東京色には染まっておらず、もちろん垢抜けてもいませんが、そんな彼らをダサいと揶揄する人はあまりいません。

方言も混じってるみたいだし、田舎から出て来たのかな、なんだか可愛いね、と感じることはあっても、ダサい云々とは違う話。

一方で、思いっきり異性を意識してるけど、なんかズレてるなこいつ、という人を見かけたことありませんか。

例えば私。

私が高校生のときは、ドラマ『未成年』が放映中で、そのドラマにどハマりした私は、出演していた反町隆史さん演じる坂詰五郎というチンピラ役の服装を、そのまま真似ていました。

真っ赤のシルクシャツに、首元を開けネックレスを光らせて。金属アレルギーなのでガッツリ腫れましたけども。

ああいうファッションは、反町隆史さんの顔立ちとスタイルがあって初めて様になるわけで、私はもちろん、ほかの誰がやっても似合うわけではありません。

木村拓哉さんのファッションを真似る人も一時期多くいましたが、そんな木村拓哉もどきのダサい男を「キムタコ」と呼称する時代もありました。

つまり、埼玉県というのはこれ。

田舎者がダサいのではなく都会人ぶるのがダサい

鷺谷政明なのに反町隆史ぶる。キムタコなのにキムタクぶる。埼玉県民なのに、東京都民ぶる。

ダサいという言葉は、田舎から出てきた田舎者に対してあてがわれる言葉ではなく、得てしてこういうズレた人に使われるものです。

また、当時流行の最先端と言われていた、竹の子族

ちょっと昔で言えば裏原系とか、少し前ならきゃりーぱみゅぱみゅのような、いわゆる流行のトレンドであった竹の子族は、ほとんどが、千葉県民と埼玉県民であったという調査結果が当時報道されたと言います。

私がよく言う「渋谷ハロウィンでコスプレしてるのほとんど埼玉県民説」も、ここから来ているんですが、竹の子族隆盛時代、「流行の最先端が埼玉?は?」という不穏な空気感が世に漂い始めました。

わかりますね。

反町隆史=鷺谷政明。は?

流行の最先端=埼玉。は?

「え?」「は?」という、そんな中、ある歌をタモリさんが気に入って、ご自身のラジオ番組で紹介したことで、この空気感に拍車がかかります。

それが、さいたまんぞうさんの『なぜか埼玉』です。

埼玉県は裸の王様だった

この歌をタモリさんは、笑いに変えながら、いじりました。おかげでこの歌は12万枚のヒット。

やがてタモリさんの中で埼玉いじりがマイブームのようになり、ラジオだけでなく、『いいとも!』でも埼玉いじりを展開し、ダサイタマという言葉が使用し、それが拡散されていきました。

そうだよ、埼玉が流行の最先端なんかじゃねーだろ、勘違いすんなよ、なんかお前ら妙に都会者ぶってるけど埼玉だろ、なんもねー埼玉のくせによ、という、溜まりに溜まっていた人々の思いが爆発したんです。

そうして、ダサイタマという言葉は広まったわけです。

時代の先駆者というのは、常に大衆が望んでいることの半歩先を具現化することが大事で。

みんながどこかで感じていたものや、求めていたものを形にして提示する。

スティーブ・ジョブズのiPod然り、宇多田ヒカルの『Automatic』然り、アンケート投票では出てこないけど、そうそう、こういうのを求めていたんだよという、潜在ニーズを具現化すること。

ダサイタマという言葉は、当時誰もが心の奥底で求めていた、端的な一言だった。

裸の王様だった埼玉県は、「王様は裸だ!(ダサイタマだ!)」という号令のもと、一斉にディスられることとなりましたとさ。

脱ダサイタマの前は脱埼玉だった

当時の埼玉県民にとって、東京で遊ぶことこそがステータスであり、埼玉で収まってる人間を見下し、群馬・栃木・茨城も見下し、挙句の果てには地方から出てきた人も田舎者扱いし。

直接的でなくとも、そんな雰囲気を、少なくとも周囲は間接的に感じ取っていた。なので、本人たちにはあまり自覚がない。

良かったら俺が東京案内しようか、ぐらいの。埼玉なんて寝に帰ってるだけで職場は東京だし(=俺は東京都民だ)ぐらいの。

いやむしろ完全に埼玉臭を隠していたかもしれない。隠そうとしていたかもしれない。自分は完全に反町隆史であると思い込もうとしていたかもしれない。

でもそれって、外から見ると相当滑稽でダサいでしょ。

シャレならまだしも、ガチの感じだと指摘しにくいし、なかなかタチが悪い。決してイジれる雰囲気ではない狩野英孝を想像してもらえるといいと思う。

…ちなみに、反町隆史さんは埼玉出身なんですけどね。いや、余談ですけど。

東京に行きやすい埼玉・行きにくい埼玉

しかし、当時の埼玉県民が、みんなそのように背伸びしていたわけではありません。

埼玉県は、県南・県北で分かれます。

これは2019年正月の『秘密の県民SHOW SP』で埼玉東西分断問題として特集されたので、東西としてもいいんですが、要は、東京寄りか、北関東寄りか、という話で。

もっと簡単に言えば、東京に出やすい地域と、出にくい地域、というだけのことです。

出やすい地域はそら頻繁に東京に出るだろうけど、出にくい地域はさほど東京に行っていたわけではないので、なんで俺らが背伸びしてダサいとか言われなきゃいけないんだ、という思いがあります。

それでも埼玉全部一緒くたにされ、ダサイタマと言われてしまった。このことはきちんと補足しておく必要があります。

埼玉県は大きく分けて、東京出やすい・出にくい地域でまず二分され、さらに縦の線が4つ入って8つに分けられます。この8つの文化圏は全く感覚が違うので、本来は、埼玉を一括りにして語れるものはほとんどありません

面倒くさいから一括りにしてしまうだけで、本来は8つであり、どれだけ譲歩しても、東京に出やすい・出にくい地域の2つで分けて考えることは、埼玉を見る上で必要最低限のせめてもの捉え方です。

私が2018年11月に本を出すまで、そして2019年1月に県民SHOWで取り上げられるまでは、ちゃんとここに触れたメディアはありません。

東京出身の埼玉県民も多かった

当時の埼玉県民がみんなイキってたわけではないということと、それに加え、東京でイキっていた埼玉県民の中には、東京出身者も多く存在した、ということも補足しておきます。

高度経済成長期当時は、都心から郊外へ住居を求めるドーナツ化現象が始まった頃なので、東京出身者で、埼玉に移り住んだ人も多くいたわけです。

なので、今は埼玉に住んでいるけど、本来の地元でイキってなにが悪いんだ、ということもあります。

まあただ、東京出身者といっても、それが北区や清瀬や多摩だったり、うーん、という考察もあるんです。

私の父親も東京都出身で、浦和、そして上尾へと移り住んで来て、そこで私がこの世に生を受けたわけですが、父親も東京出身といっても練馬ですからね。

うーん、って感じでしょ。

そう考えていくと、都会者とされるような地域って、港区や渋谷区だったり、ごく一部なんですよね。そこにいる人も、地方から来てる人が多いわけで、日本の9割は田舎者としていいと、私は思いますけどね。

ダサイタマは宿命

東京に出やすい埼玉、埼玉に移り住んだ東京出身者、高度経済成長期、バブル時代、竹の子族、なぜが埼玉…。

知れば知るほど、埼玉県はディスられる運命を辿っていたかのような気さえしてくるでしょう。

さて、おもしろいのはここからです。

ダサイタマという言葉に強く反発した、当時の若者たちの下の世代は、なぜか、この言葉と共存する道を選択するのです。

それが、映画『翔んで埼玉』の大ヒットに繋がっていくことになります。

(次号へ続く)

※より深い考察は著書に全てまとめています。

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なぜ埼玉県民だけがディスられても平気なのか?

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